大阪大学
集中講義「科学技術コミュニケーション演習」(前編)
CO

STUDY

授業レポート

2023年7月20日(木) 公開

授業レポート
集中講義「科学技術コミュニケーション演習」(前編)
2022年度

COデザインセンターでは多様な授業が開講されています。

2022年度、夏学期期間中に実施された集中講義「科学技術コミュニケーション演習」(2022年度担当:八木絵香、水町衣里、鹿野祐介)の様子を2回に分けてレポートします。今年は、2年ぶりに対面形式での実施となりました。

2022年9月28日(水)から30日(金)の3日間で行われた集中講義でしたが、2022年度はプレセッションとして9月6日(火)に施設見学会も行われました。授業レポートの前編として、このプレセッションの様子をご紹介します。後編は近日中に公開予定です。


「科学技術コミュニケーション演習」は、多様な研究科の大学院生が受講します(*1)。異なる専門を持つ者同士、また専門家と専門家以外の人々(政策決定者・報道機関・一般市民等)とのコミュニケーションの困難さについて考え、それらに向き合うためのコミュニケーションの姿勢や作法を獲得することを目的にしています。

*1 「科学技術コミュニケーション演習」は、副専攻プログラム「公共圏における科学技術政策」の履修登録生にとっては必修科目ですが、このプログラムに登録していない大学院生も受講することができます。

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今年度は、法学、理学、工学、情報科学、人間科学、言語文化、人文学の7つの研究科から17人が受講しました。
例年、今まさに多様な専門家が議論を重ねている最中の、科学技術と社会のあいだに生じる様々な課題を扱っています(*2)。

*2 扱うテーマは毎年変わります。過去には、以下のようなテーマを扱いました。「BSE事件に伴って生じたアメリカ産牛肉輸入停止を解除するための条件とは何か」、「原子力発電所から生じる高レベル放射性廃棄物の地層処分の是非について」、「原子力発電所の再稼働に必要な条件について」、「地球温暖化問題に関する市民参加のあり方について」、「高レベル放射性廃棄物の地層処分」、「COVID-19をめぐる科学的助言のあり方」など。これまでの実施レポートはこちらから。

2020年度 https://cscd.osaka-u.ac.jp/center/2020/000306.html
2018年度 https://cscd.osaka-u.ac.jp/center/2018/000719.html
2017年度 https://cscd.osaka-u.ac.jp/center/2018/000619.html

2022年度は、顔認証・顔認識技術を取り上げました。具体的には、架空のケースとして「顔認証・顔認識技術を利用したシステムを大学のキャンパスに導入するとすれば?」という問いについて3日間の集中的な討論を行い、課題となる科学技術と社会のかかわりについて理解しつつ、自らの専門性をふまえた、主張および応答ができるようになることを目指しました。

3日間の集中講義に先立って、大阪市内にあるNECのショールーム「NEC Future Creation Hub KANSAI」の見学を行いました。

まずは、展示されている顔認証・認識技術を体験するための登録から。専用の端末で「顔」を登録します。

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チケットレスでイベント会場のゲートを通ることができる技術、顔認証決済の技術、カメラに映った人の数や推定年齢や性別、マスクやサングラスの有無などが判別できるような顔認識の技術などを実際に体験しました。「顔認識」や「顔認証」には用途や目的に応じて幅広い実装があるということが理解できました。

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設置するカメラの位置や精度によって取得できるデータが異なること、顔のどの部分によって人を識別するかも目的や設置場所に応じて異なった設計や技術が求められるといった説明もありました。

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例えば外食をする際に、あらかじめ該当するアレルギー情報や宗教的な理由で忌避すべき食品などを「顔」の登録時に合わせて入力をしておけば、それらを避けたメニューが提示されるようになるというサービスなど、顔認証技術の利活用の可能性についても説明を受けました。

学生たちは技術がもたらすメリットを理解すると同時に、個人の情報をシステムにどこまで入力し、どの程度まで踏み込んだ提案をしてもらいたいか、技術を利用する側の意識やプライバシーについても考える幅が拡がったようでした。

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他にも危険物を管理する現場では、入退場管理に顔認証を導入することで、関わる人の安全性やセキュリティを確保できるようになるなど、人の命や身体的な安全性の関わる現場で必要とされる顔認証技術の利活用についても具体的なシーンをイメージしながら考える機会を持つことができました。

質疑応答の時間では、顔認証・顔認識技術の発展や規制に関する国際的な動向について、社会的な評価が定まっていない利活用事例について、技術的な観点や規範的な観点など多様な観点からの質問に、丁寧に回答いただきました。

今回のショールーム見学では、集中講義のお題となっている顔認証・顔認識技術のユースケースを具体的に考えるヒントや直接的な手がかりをたくさん得ることができました。

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