サイエンスカフェ@千里公民館 レポート
どうする?どうなる?クルマ社会の未来
2023年6月29日(木)に、サイエンスカフェ@千里公民館「どうする?どうなる?クルマ社会の未来」を開催しました。
<開催概要>
- サイエンスカフェ@千里公民館「どうする?どうなる?クルマ社会の未来」
- 進行:八木 絵香(大阪大学COデザインセンター 教授)
- コメンテーター:山崎 吾郎(大阪大学COデザインセンター 教授)
- 日時:2023年6月29日(木)13:00〜15:00
- 場所:千里公民館 第1講座室(千里文化センター「コラボ」内)
- 主催:豊中市立千里公民館
- 共催:公共圏における科学技術・教育研究拠点(STiPS)、大阪大学COデザインセンター、大阪大学社会技術共創研究センター(ELSIセンター)
※本イベントは、JST/RISTEX「科学技術の倫理的・法制度的・社会的課題(ELSI)への包括的実践研究開発プログラム」研究開発プロジェクト「脱炭素化技術の日本での開発/普及推進戦略におけるELSIの確立」(代表者:江守正多)の一環で実施しました。
3年ぶりの開催となった今回は、40代から80代の方まで幅広い年齢層の方がた22人(大阪大学や豊中市の関係者を除く)がご参加くださいました。
今回のテーマは「どうする?どうなる?クルマ社会の未来」。
コメンテーターとして、文化人類学の観点からモビリティに関心を持つ、山崎吾郎さん(大阪大学COデザインセンター 教授)をお招きしました。
このサイエンスカフェは、次のようなスタイルで実施しました。
・参加者のみなさんには、少人数のグループに分かれて座っていただく。
・脱炭素社会の実現に向けた動きの一つである「自家用車に乗らないライフスタイルへと移行する」ことについて簡単に紹介。
・グループごとにテーマについて対話し、その内容を会場全体で共有した後に、コメンテーターがお話する。
・各グループには大阪大学の学生や教員1〜2人が加わって対話のお手伝いをする。
今回、対話のお手伝いをしたのは、2023年度春学期開講科目「ファシリテーション入門」でファシリテーションスキルについて学んだ受講生や数年前に同様の授業を受講した学生でした。
グループでは、まず、自己紹介がてら「自動車を使う場面ときいて、パッと思いついたことは?」と書かれたワークシートも活用しながら、参加者同士での対話が始まりました。
前半は、「自家用車の使い方が変わり、移動のスタイルが変わる時に期待すること、不安なことは?」という問いかけに対して、それぞれ意見を共有していきます。
ひととおり議論が進んだところで、それぞれのグループで出てきた意見を、会場全体で共有しました。
「やはり病気などの時に困るのでは?」
「子育て中など、どうしても荷物が多い生活シーンでも困る。」
「ガソリンではない"車"があればいいのでは?」
という意見もあれば、
「一人一台(あるいは一家に一台)ではなく、必要な人が必要な時に使えるように、レンタカーやタクシーなどが使いやすくなるといいのでは?」
という意見もありました。
他にも、
「行政の書類や手続きをオンラインで運営・管理したり、病院もあちこち行かなくても1カ所で済むようになれば、移動自体を減らせるのでは?」
という方も。
コメンテーターの山崎さんからは、「移動を目的と手段の側面から考えてみるとどうでしょう。移動の手段を変えることは比較的やりやすいけれど、移動の目的を変えたり制限することは案外、ハードルが高いのではないでしょうか?」といった発言がありました。
後半は、前半の対話で出てきた意見や、山崎さんからのコメントも踏まえつつ、「自家用車の使い方が変わり、移動のスタイルが変わる時に何を大切にすればよいでしょう?」という問いについて話し合ってみました。
「使いやすくて便利な公共交通機関を整備できないか、そのためには町づくり全体のデザインを考える必要があるのでは?」
「都市部と地方など住んでいるところによる違いもあるので、必要な時には使えるようにしておく必要があるのでは?」
「自家用車でなくなり、自分が運転しない場合は、安全性が確保できるのだろうか?」
「便利さや時間のとらえかたなど、価値観も変える必要があるのでは?」
など、さまざまな意見が出ていました。
参加者のみなさんに記入していただいたアンケートには、「他世代の方と話すことで、自分にはない視点をいただきました。行政システム、価値共有、まちづくり、工夫して社会が変わっていくことが楽しみです」という感想を寄せてくださった方もありました。
グループでの対話をお手伝いした学生たちは、春学期にファシリテーションの授業を受けたばかり。先輩にも助けられながら、多様な年代、背景をもつ人たちの意見に耳を傾け、対話のお手伝いをする実体験を、緊張しながらもやり遂げ、達成感も感じていたようでした。