大阪大学
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授業レポート

2021年9月22日(水) 公開

授業レポート
集中講義「メディアリテラシー」
COデザインセンター開講科目<リテラシー>

COデザインセンターでは多様な授業が開講されています。

2020年度、COデザインセンターから「リテラシー」の科目として開講された集中講義「メディアリテラシー」(2020年度担当:久保田テツ、ほか)の様子をレポートします。

※ 2021年度 集中講義「メディアリテラシー」のシラバスは、こちらをご覧ください。

この科目は、多様なバックグラウンド・視点を持つ受講者と、実際の放送現場で活躍するゲストとのディスカッションを中心に進行するというものです。

具体的には、
1)ある社会課題に関する番組の企画制作のミニワークを行い、それに対して、ゲストからコメントを受ける
2)現場見学ゲストレクチャーを通じて、放送の最前線を知る
3)さらに、企画をブラッシュアップする
という作業を通じて、情報を送る側の放送倫理を知るとともに、情報を受ける側のメディアリテラシーを学ぶ、ということを目的にした科目です。

放送業界やマスコミ、ジャーナリストなどに関心を持っている学生が、キャリアイメージを描けるようになることもねらいの一つです。

2020年度は12月3、4、10、11日の4日間、オンライン形式で行われ、学部生から院生まで、さまざまな学部・研究科から学生が受講しました。実際に、放送業界などメディア関係に就職を希望する学生も多く、活発な質疑応答や議論が行われました。

4日間の主なスケジュールは次の通りです。

■ 1日目 12/3(木)4-5限
 ガイダンス、趣旨説明
 個人ワーク(講義に関連する番組の事前視聴/個人課題作成準備)

■ 2日目 12/4(金)2-5限
 受講者自己紹介、事前課題の発表
 NHKのゲスト講師によるレクチャー:番組の企画を立てるとは?
 グループワーク

■ 3日目 12/10(木)2-5限
 グループワーク
 NHKのゲスト講師によるレクチャー:放送の最前線を知る
 中間発表

■ 4日目 12/11(金)3-5限
 グループワーク(発表準備)
 最終発表、NHKのゲスト講師による講評
 まとめ、ふりかえり

以下、各コーナーを少しずつご紹介します。


2日目 NHKのゲスト講師によるレクチャー:番組の企画を立てるとは?

NHK大阪放送局 企画部の井澤由貴さんより、公共放送としてのNHKについて説明をしていただいた後、NHK大阪放送局のチーフ・プロデューサーやディレクター3名からの講義がありました。「番組の企画を立てるとは?」という大きなテーマに沿って、それぞれ以下のようなお話をしていただきました。

萩島昌平 チーフ・プロデューサー(NHK大阪局 制作部福祉班)
主には、『バリバラ みんなのためのバリアフリー・バラエティー』についてご紹介いただき、特に、このコロナ禍で何をどのように取り上げたのかということについてお話いただきました。また、『かんさい子どもおうえんキャンペーン』についてもお話がありました。

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内田ゆき チーフ・プロデューサー(NHK大阪局 制作部ドラマ班)
内田さんが関わった2つのドラマ(BKリモートドラマ「ホーム・ノット・アローン」、大阪発ショートドラマ「これっきりサマー」)を例に、コロナ禍で挑戦された新しい形のドラマ制作についてご紹介いただきました。

佐野広記 ディレクター(NHK大阪局 報道部報道番組)
発生から10年となる東日本大震災の遺族をテーマとしたNHKスペシャル「亡き人との"再会"~被災地三度目の夏に~」の制作過程についてお話いただきました。取材先や関係者とのやりとりを経て、何を、どう伝えていくのかが形になっていくまでのリアルな想いなどをお聞かせいただきました。

番組制作にあたっては、社会課題を広く知らせるだけでなく、解決に向けた動きにつながるような企画を心がけていること、NHKの役割として、最近はとくに「公共放送から公共メディアへ」ということを意識されていることなどを教えていただきました。

事前に視聴していた番組の中で、なぜあのシーンが選ばれ、テロップなのか語りで進行するのか、なぜあの音楽になったのかなど、現場の息遣いがダイレクトに伝わってきました。


その熱いエネルギーに促されるように、学生からもさまざまな質問やコメントが寄せられました。
例えば、
・マイノリティの問題を扱いながら、音楽なども含めて明るい雰囲気にしている目的は?
・ドラマを大阪放送局で作ると、費用も調整も大変なのに、なぜ続けるのか?
・被害者や被災者に登場してもらって辛い体験を話してもらうのは、どんな意味があるのか?
・メッセージ性の強さと面白さのバランスが難しいと思うが、どうやってバランスをとっているのか?

ゲストのみなさんには、一つ一つの質問やコメントに丁寧に答えていただきました。

3日目 NHKのゲスト講師によるレクチャー:放送の最前線を知る

例年はNHK大阪放送局を訪問して、朝ドラの撮影セットやニューススタジオを見せていただいたり、映像の編集体験などもさせていただいたり、放送の現場で活躍されている記者やデザイナーの方からお話を伺ったりしているのですが(2019年度の授業実施レポートはこちら)、2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、現場見学は中止になりました。

現場見学の代わりに、NHK大阪放送局から2名のゲスト講師をお招きし、「放送の最前線を知る」というテーマでお話いただきました。

三石泰行 副部長(NHK大阪局 報道部情報取材)
NHKスペシャル「半グレ」について、どのように取材されたのかということを中心に伺いました。記者とディレクターの垣根はどんどん低くなっていて、記者の関心から取材をして番組が作られることも多いというお話もありました。

瀨木文 デザイナー(NHK大阪局 編成部映像デザイン)
映像デザインという仕事が、番組制作の中でどのような位置づけにあるのか、ということについて、実際に瀨木さんが関わった番組(よるドラ『閻魔堂沙羅の推理奇譚』)を例に紹介していただきました。ディレクターから投げかけられたテーマをこなすだけではなく、さまざまな提案をして番組イメージを固めていくなど、番組全体のコンセプトをまとめていく重要な役割を担う場合もあるというお話をお聞きしました。

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番組のスタイルや機材などもどんどん変化していく中でのさまざまなチャレンジなど、まさに番組作りの最前線の様子をお話しいただきました。


学生からは、
・加害者などに取材をしていて、相手の話に共感できないことはないのか。共感できないとしたらどうしているのか?
・被害者の取材をしていて、辛くなることはないのか?
・記者の視点から番組を作る意味とは?
・デザイナーの仕事のイメージが変わった。番組を一緒に作っているのだということが分かったが、デザイナー、演出、ディレクターなど、それぞれの違いはどのような点か?

それぞれの質問に、現場で感じている本音も交えつつお答えいただき、学生たちも実際に現場で働くことをイメージしながらディスカッションを行うことができたようでした。

4日間を通じて取り組んだグループワーク

4日間を通じて受講生が取り組む課題は次のものです。

いま、目に見える、あるいはすぐには見えない、多様な社会的課題が
私(たち)のまわりに存在しています。

では、そのうちのひとつをテーマとして取りあげて
テレビ番組をつくるとしたら、どのような企画内容になるでしょうか。
グループで話し合って番組を提案してください。

受講生は3-4人のグループに分かれて、テレビ番組の企画案の作成に取り組みました。

各自が社会課題として取り上げたいテーマを持ち寄り、ディスカッションをしながらグループで取り上げるテーマを絞り込み、どのような番組にするのかを考えていきます。実際にNHKで使用されている番組提案票のフォーマットにもとづき、番組名、企画のねらい(ターゲットや想定される放送時間なども含む)などを検討していきます。

ドキュメンタリー番組を提案するグループや、ドラマとして社会課題を取り上げるという選択したグループがありました。他にも、コロナ禍における留学生の姿を伝えるというテーマで、実際にアンケートを実施して番組提案に活かすということを試みたグループもありました。

授業最終日に、作り込んだ番組提案票を示しつつ、発表を行いました。この日、発表を聞いて、講評をしていただいたのは、NHK大阪放送局 錦織直人チーフ・プロデューサーです。ご自身の経験なども踏まえつつ、1つ1つの提案について面白い点や改善点などコメントいただきました。また、「企画とかアイディアを思いつかない、という人がいるけれども、そもそも、企画とかアイディアは何もないところから思いつくものではない。"無"から"有"になるわけではなくて、"有"から"有"が生まれるもの。既存のものをよく学んでください」や「これからぜひ映像で表現するということにも挑戦してみてください」というアドバイスをいただきました。


受講生からは、次のような感想が寄せられました。

・講義を通して、「メディア」や「公共放送」を考える材料が多く得られた。
・メッセージの送り手=制作者側が「いつ、だれに、なにを」伝えるのかを考えていることについて、これまであまりにも考えてこなかったことに気がついた。
・テレビやマスメディアは課題を提示するもの(事実を周知させるためにあるもの)だと考えていたが、最近は課題を提示し、それを解決する役割も担っているという話が特に印象に残った。
・ぜひ対面で受講したかったし、NHK大阪放送局にもお邪魔したかった。

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