授業レポート・イベントレポート
春夏学期「ソーシャル・イノベーション(方法論から実践まで)」
COデザインセンター開講科目<協働術>
春夏学期授業「ソーシャル・イノベーション(方法論から実践まで)」(※)から生まれたプロジェクトでは、兵庫県東条川疏水ネットワーク博物館会議と連携して、疏水(みずをひっぱってくる仕組み:ダム、水路、ため池、分水工など)の価値に気づいてもらうことを目的として、デザインシンキングを利用しながらプロジェクトを提案し、実践につなげることができました。
※)春夏学期授業「ソーシャル・イノベーション(方法論から実践まで)」について、詳しくはこちらをご覧ください。
講義ではまず、様々な実践家の方々からソーシャル・イノベーション事例を紹介していただき、テーマ毎にディスカッションをしました。
「働きがい×バリュー・プロポジション・デザイン」では、NPO法人サービスグラントの槇野吉晃さん、「気候変動×システムシンキング」では、地球環境戦略研究機関(IGES)の松尾直樹さん、「貧困×ソーシャルインパクト」では、NPOルワンダの教育を考える会から、望月優子さんをお招きしました。
そして、デザイン・シンキングの学びと実践に移ります。
東条川疏水ネットワーク博物館会議事務局の山際丈さんや神戸芸術工科大学の谷口文保さんから現地の課題や活動、アートプロジェクトについて情報をいただきました。
2チームに分かれて、MIROというアプリケーションを使って、何度もプレゼンを繰り返しました。
講義が終了した9月、少しはコロナ禍の感染状況が落ち着いたとのことで、初めて現地を訪れ、共感マップでpersonaとして設定した、女性起業家やカフェの運営者にインタビューをさせていただき、オープンなプレゼンテーションを行いました。プレゼンは現地の皆様に大変好評をいただき、これまで東条川疏水ネットワーク博物館事業に関わることの少なかった、若年層や女性の方々を切り開くことができた、との評価をいただきました。
インタビューの中で、水を利用した化粧品の開発などが話題になり、参加者の谷佳央梨さんが、「鴨川清水」を使ったせっけんを開発し、販売されることになりました。
間接的ながら、イノベーションのスタートです。
神戸新聞NEXT(2020/10/21)
日本酒×鴨川清水=「美」の特産品 加東産にこだわったせっけん開発
記事は、こちらをご覧ください。
11月には写真アーティストの斎藤彰英さんと一緒にフィールドワークをし、写真の収集やカフェでの写真展示について、アイデアを具体化していきました。
12月には、webから展示場所となるカフェの候補を探し、現地を見て回り、交渉しながら、加東市天神の「CHARADE」さんに会場を引き受けていただくことが決定。コロナ禍ということもあり、SNSでのフォトコンテスト形式で写真を集めることになりました。
伝わるデザインとはどんな色か、どんな配置か、など、書籍やwebページで研究しながら、自分たちでポスターやチラシを作成。1月には現地で様々な協力者を訪ねて、配布作業をしました。どこに疏水施設があるか、現地にいてもわかりやすいようにGoogle mapも作成。三木市や加東市の広報紙にも掲載していただきました。
写真家の斎藤さんからのアドバイスで、きれいな写真を集めるコンテストではなくて、写真とエピソードをセットにして、日常風景と記憶を掘り起こすようなものに、というコンセプトを前面に打ち出していきます。
12月からスタートしたSNSでの写真の募集は、当初はなかなか集まらず、フォトコンテストのご経験のある、加東市観光協会さん、兵庫教育大さん、社高校生徒会さん、KATTOさんなどに、アドバイスをいただきに参りました。チラシをおいていただけるよう、お願いに回る中で、様々な方との出会いがあり、おかげさまで最終的には90枚以上の写真投稿がありました。
そして、社高校生活科学科と展示会場のカフェ「CHARADE」さんが特別メニューを共同開発してくださいました。疏水が育んだ恵みを、というテーマで打ち合わせをし、やしろ茶と社名産の桃をつかった「やしろ茶香る疏水ピザ」「幻の桃ジャムぜいたくソーダ」が期間限定での販売となりました。
また、移住者の方がopenされているコワーキングスペースcontuttiさんからは、身近な疏水施設のツアーをしてほしいとのご要望をいただいて、兵庫県のご協力によりツアーが実現、展示直前にはスペースでの準備作業もさせていただきました。
神戸新聞にも3度掲載していただき、講義の受講生のアイデアから生まれたプロジェクトから、フォトコンテストやレシピ開発、疏水ツアー、特産品の掘り起こし、せっけん開発などなど、多くの方々のご協力でアイデアが形になっていきました。まさにCOデザイン、デザインシンキングの実践です!これまで疏水を知らなかった方々から、疏水を知るきっかけになった、との声も聞かれました。展示に来場していただいた中から389人の方にアンケート調査にご協力いただき、フォトコンテストの効果や創造性、寛容性、今後の企画への参加意向などを分析しています。
神戸新聞NEXT(2021/3/4)
写真が語る私と水の物語 東条川疏水フォトコンテスト 加東で47点展示
記事は、こちらをご覧ください。
今年度のプロジェクトで培われた地域内外の方々とのネットワークを資産に、来年度はどのようなアイデアと実践が生まれるか楽しみです。
twitterには沢山の写真が投稿されています。
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<受講生より>
基礎工学研究科M2 樫内健人さん
「アイデアを出すだけでなく、それを実現する所まで取り組めたことが印象的で、進めていくたびに大きな達成感がありました。特に、自分のアイデアをきっかけに色々なつながりができていき、良い反響をいただけたことが嬉しかったです。また、授業やプロジェクトを通して、デザインの仕方やチームワーク、議論の進め方など、今後も役立つような幅広い知識を学び、大変貴重な経験を積むことができました。授業で色々な専攻の人と話をしたり、多くの方々の力を借りながらプロジェクトを進めることで、自分の世界が大きく広がりました! 他の人とちょっと違うことを学びたい人、誰もやったことがないことをやってみたい人にオススメです!」
文学研究科M1 藤井滉良さん
「この講義&プロジェクトでは、文理を問わず様々な出身のメンバーが集まり、意見を出し合い、新たな形を生み出すことに強みがあります。他の分野の方々との会話を通じて、新たな知識を吸収したり、自分の分野でより学ぶべきことやその分野で発揮できる強みが鮮明に浮かび上がってきます。院に進学してみたものの、自分の研究が社会にどう活かせるかまだ不明瞭である方々に、私はこの講義をおすすめします。」
メルボルン大学M1 松村真弥さん
「自分たちが行っていくことを通して、どのようなSocial impactを生むことが出来るのか?机上で考えるだけでなく、実装しながら体感でき最後まで楽しく責任をもって学べる授業です。また、社会問題(国内外問わず)に対して色々な行動やムーブメントを起こしている方々のお話を聞き、一緒に解決策を考えていくので、たくさんの気づきや発見に出会えました。様々な事を網羅的に学びたい方・社会との付き合い方やSustainabilityに興味のある方に受講をお勧めします。」
保健学科1回生 青木彩香さん
「異なる専門の方々と協力し1つのイベントを完成させるのは、沢山の刺激があって面白かったです。また、自分の参加しているプロジェクトを通して学外の方にも影響を与えることが出来たのはとても良い経験になりました。今回のプロジェクトを通して学んだことを自分の専門分野でも活かしていきたいと思います。」
(書き手:松本 文子 COデザインセンター特任助教)