授業レポート
秋冬学期「表現術C(ZINEを発行する)」
COデザインセンター開講科目<表現術>
COデザインセンターでは多様な授業が開講されています。
今回は、秋冬学期に「表現術」として開講されている「表現術C(ZINEを発行する)」(担当:山森 裕毅)について紹介します。
本授業の目的は、以下のようにシラバスに記載されています。
<授業の目的と概要>
本授業の目的はZINE(ジン)の社会的意義と、それを実際に作る方法を実践的に学ぶことです。
個人あるいは小グループが自主的に発行する小冊子のことをZINEと呼びます。ZINEは出版社を通さないため、商業的側面が弱く、規制もかからず、出来不出来も問いません。個人が自己表現を行うのに最適なメディアのひとつです。とりわけマイノリティは社会のなかで自分たちの言葉を歪められたり、奪われたりしている場合が多く、彼ら・彼女らの思いはZINEの形を取って表現されることがあります。そのためZINEは「持たざる者の最後の砦」ともいわれます。COデザインセンター「社会の臨床」コースはマイノリティの生き方を/に学ぶため、ZINEに触れておくことには意味があります。
こうした背景を意識しつつ、本授業ではZINE制作を通して自分たちの思いを言葉と形にしていきます。比較的長い時間をかけてチームで制作を行ってもらいます。このことでチームワークとDIYの精神を養います。またZINEは表現媒体なので、何をどう表現するのかという表現における価値と倫理についても実践を通して考えていきます。
今回は、2019年度受講生の黒田 早織さん(外国語学部日本語専攻5年)、谷川 翠さん(経済学部経済経営学科2年)、永井 佑依さん(外国語学部デンマーク語専攻2年)が、自分たちで制作し、完成したZINEを初めて見るという場面を取材させていただきました。
このチームは「大学生にとって政治とは?」という関心のもとで集まり、制作にあたりました。サンプルが数部残っているので、読みたい方は担当教員の山森先生までご連絡ください。
(取材日:2020年2月5日、所属などは取材時点のもの)
製本されたZINEを、早速手にとる皆さん。
― 制作グループのみなさんは、この授業を受講する前から、もともと友達同士だったのですか?
谷川さん:
いえ、違います。たまたま友達だったという人もグループの中にいますが、全員が友達だったわけではないです。
― 初対面で、企画から編集、制作まで、細かな作業を含め一緒に取り組んだわけですね。
谷川さん:
はい。もともと友達だったわけじゃない人と力をあわせて何かをつくるというのは、とても楽しかったです。
黒田さん:
すごく楽しかったよね。
― けんかとか、しなかったですか?
黒田さん:
全然!すごく仲良しです。
谷川さん:
いい感じにそれぞれが違う考え方をしていたのが、私は楽しかったですね。それでいて、いい感じにテンションが近くて。それも良かった。
― みなさん、学年もばらばらなんですよね。
黒田さん:
そうなんです。1年生、2年生、5年生のグループでした。私は5年生なのですが、他のみんなが年下だからやりにくいとかは、一度も思わなかったです。みんな得意なことがばらばらだったのが本当に良かった。私は割とぽんぽんぽんと意見を出すのが得意なのですが、永井さんは詳しく議事録を取ってくれたり、細かな事務的な作業をきっちりやってくれたりしてくれて。谷川さんはデザインが得意で。
谷川さん:
話し合っていても、いつもだいたい意見が分かれていたよね。
永井さん:
確かに。それを、黒田さんが、「じゃあ、A案はこれ。B案はこれ。」と整理してくれていました。
谷川さん:
そう。それで、どっちの方がいいかとか、折衷案をつくって、A案のここの部分とB案のここの部分をあわせたらすごくいいよね、とか。そういう感じで話し合いが進んでいくのが楽しかった。
永井さん:
黒田さんがそうやってくれていたよね。
谷川さん:
私は、高校時代、自分の案が通っちゃう場面が多かったんです。私、結構しっかり案をつくりこんだりしちゃうので。でも今回は、私の案とは全然違う良さがある案が他の人から出てきて、結果的にそっちになったり、折衷案をつくったりして、もともと自分が思っていたものと全然違うものができるということが多かった。私はそれがすごく楽しかったです。
― テーマはどうやって決めたのですか?
黒田さん:
政治的なテーマをやりたい、と私が案を出したら、みんなが参加してくれて。
谷川さん:
私は、日常からちょっと離れた、本格的なものをつくりたいと思っていて、一番面白そうと思ったのが黒田さんのテーマでした。
永井さん:
私は、誰か「ひとりの人」にフォーカスしてみたいというのがありました。私はそれほど政治には詳しくないのですが、いろいろな人に会ってインタビューする、という企画に興味を持ちました。
― 自分たちでアポをとって、インタビューに行ったのですよね。実際にやってみてどうでしたか?
永井さん:
本当に楽しかったです。じっくりインタビューすることをとおして、その人がひとりの人としてしっかりと筋が通っていると実感できたのが、とても印象的でした。このZINEの中にメンバーそれぞれがコラムも書いたのですが、私はインタビューをする前と後での考え方の変化について、自問自答するようなかたちで書きました。コラムはそれぞれが今回の活動をとおして自分の感じたことを書いているので、読者はそれぞれどこかに共感するものがあるんじゃないかな、と思っています。
― 改めて、完成した「自分たちのZINE」をみてどうですか。
谷川さん:
すごくいいものができた!という気持ちはあるのですが、だからこそ余計に、ちょっと心残りはありますね・・・。見出しとか、私がつくったのですが、この文字のサイズをこの紙のサイズに落とし込んだらどうなるかとかの調整がなかなか難しくて。文字の色をもう少し濃くしたかったな、とか、やっぱりありますね。
黒田さん:
でもすごくいい出来だよね。できあがってすごくうれしい。
― すごく時間をかけてつくったことが、紙面から伝わってきますね。
黒田さん:
どのくらい時間をかけたかなぁ。
永井さん:
少なくとも、毎週1時間か2時間はやっていましたね。
黒田さん:
インタビュー前の調査もかなりしましたし、インタビューをしたあとにテープ起こしもしましたし。結構時間を使ったよね。
谷川さん:
今期の授業のなかで、1、2を争うレベルで力を入れて取り組みました。
しみじみとうれしそうに、完成したZINEを眺める三人の表情がとても印象的でした。
本授業では、毎年、多様なZINEが制作されています。ZINEについて興味がある方は、担当の山森先生までお問い合わせください。
(※)2020年度の授業内容については、今後変更になる可能性がありますので、都度COデザインセンターのウェブページなどで確認してください。
(書き手:森川優子 COデザインセンター特任研究員)