大阪大学
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授業レポート

2020年4月24日(金) 公開

授業レポート
春〜夏学期「社会の中の科学技術概論」(1)
COデザインセンター開講科目<協働術>

COデザインセンターでは多様な授業が開講されています。


その中のひとつである、2020年度春〜夏学期「社会の中の科学技術概論」(平川 秀幸、他)。

この授業は、大阪大学の大学院生を対象とした授業科目です。文学研究科、経済学研究科、理学研究科、基礎工学研究科、生命機能研究科など、多様な学生が受講しています。

また、副専攻・高度副プログラム「公共圏における科学技術政策(以下、STiPS)」 の必修科目でもあります。

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この科目は、例年であれば、ゲストレクチャー(90分)と学生同士のグループディスカッション(90分)とがセットになったオムニバス形式の講義・演習スタイルで運営されていますが、2020年度は新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、その方法とテーマを変更して開始されました。

2020年度「社会の中の科学技術概論」を通じて議論するテーマは、「新型コロナウィルス感染症(以下、新型コロナ)とその対応の現在と将来("ポストコロナ時代")について」です。疾患としての新型コロナのリスクへの不安だけでなく、事業や生活の見通しが立たない経済リスクへの不安も広がっているなか、日本でも2020年4月7日に7都道府県に対して緊急事態宣言が発表されました(授業を開始した2020年4月15日段階)。そこでこの講義では、今現在進行中の新型コロナについて、特に日本の状況に焦点をあげて、国や自治体、医療、専門家、報道、事業者、個人が直面している政策や医療体制、仕事、生活、コミュニケーション等における問題点をELSI の観点から多角的にとらえ、どのような対応が取られるべきだったか、取られるべきか、また将来、類似した問題が発生したときに適切に対処できる"ポストコロナ時代"の社会を実現するには何が必要なのか、社会や個人の課題について考えていきます。

緊急事態宣言下、自らの生活にも制限がかかる中で、受講生たちはどのようなことを感じ、何に問題意識を持っているのか。教員側と問題意識を交換し、相互コミュニケーションをとりながら授業が進むことも、今回の授業の特徴です。

2020年4月15日に行われた第一回目の授業では、受講生たちがビデオ会議システムを使い、自分の専門の紹介と本授業の受講理由、「新型コロナ関連して関心がある問題」について共有しました。


(生命機能研究科D1)
「生命現象の定量化が専門です。ラボが大阪大学から少し離れているので、他の研究科の人と交流したいと思い、受講を検討しています。

私が関心を持っているのは、コロナウィルスそのものの性質や治療法発展の歴史です。また、病院の運営体制の歴史やその変化にも関心があります。」


(理学研究科M1)
「現在は、小惑星表面の宇宙風化作用について研究をしています。自分にはない物事の判断の基準や思考プロセスに触れることができると思い、この授業の受講を希望しました。

新型コロナに関して、現在、日本に限らず世界中で様々な根拠のない情報がSNS等で広まっています。しかしながら、それを実際に信じてしまう人が出ている状況です。ウィルスという『よくわからない怖いもの』に関する情報の真偽の見分け方の難しさや、根拠のない情報を鵜呑みにしてしまう人間の心理について関心を持っています。」


(人間科学研究科M1)
「所属ゼミは哲学・人間学系で、クィア・フェミニズム理論における身体性について研究しています。この授業で普段交流の機会がない異分野の人とディスカッションすることは、自分の主専攻研究にとってもプラスになる、と考えています。

新型コロナについては、国民への補償に関心を持っています。『貧しさは競争に勝てなかった結果だ』というような考え方は、新型コロナのような人類の理解や経験値を超える災難によって仕事を失ったり、収入が激減したりする場合には通用しないと思います。ウィルスとの戦いは数年単位で続くと考えている人たちもいます。人々を守るために政府はどのような対策をとることができるのか、について考えたいと思っています。」


(医学系研究科保健学専攻M2)
「高齢者の認知機能低下の要因分析を研究対象としています。 STiPS 副専攻プログラムを専攻しています。社会的な問題について多角的に議論し、解決策を検討する、という学生主体の授業に魅力を感じています。

私は、新型コロナによって経済状況が悪化することが気になっています。失業者数が増加することによって自殺者数が増加するのではないか。政府が中小企業などを中心に支援するという方針を出していますが、それは本当に効果があるのか、ということに関心があります。」


(薬学研究科M1)
「X線回析装置やNMR装置を用いた蛋白質等の構造分析を行っています。現在の科学がどう社会と関わっていくべきか、といった俯瞰的な視野を手に入れるために受講を決めました。

新型コロナに関しては、増産されたマスクがどういう基準でどこに配られているのか、という疑問を持っています。」


(理学研究科M1)
「自分の意見を表現するということに慣れたいと思い、この授業を受講することにしました。

ネットやテレビ、SNSなどで情報が簡単に得られるようになっている反面、その情報が正しいのか否かの見極めが難しい、と感じています。どうすれば一般の人々に正しく情報を発信できるのか、ということを考えたいです。」


(理学研究科M2)
「新型コロナ問題は私の専門分野だけでなく、私の生活にも大きな影響を与えています。この問題に向き合ってみよう、という気持ちになったことが、この授業を受講しようと思ったきっかけです。

PCR検査についての一般の人々の認識と、医療従事者・研究者の間の認識の差が気になります。PCR検査を早急に、全員に実施してほしい、という声があるのは理解できるのですが、医療従事者の負担を減らすためにも、両者の認識の差を埋めるような報道などが必要だと感じています。」


(薬学研究科M1)
「この授業を通じて、様々な分野の人と社会や科学技術について議論することで、視野を広げたいと考えています。

新型コロナについて、日本は諸外国と比較し法定拘束力の弱い対策を行っていると考えています。現在の法制度のもとで日本がより拘束力の強い対応ができる可能性があるのか、ということに関心があります。」


(理学研究科M2)
「月惑星探査と地質学に関係する分野が研究対象です。同じ研究室の人がSTiPSプログラムを受講していたのが受講のきっかけです。

新型コロナに関しては、パンデミックが収束したあとどのように国際情勢が変化しているのか、ということについて関心があります。」


(理学研究科M1)
「この授業を受講したのは、自分の研究テーマを進める上で必要だと思ったからです。

様々な新型コロナの問題に関して一番気になっているのは教育です。従来への回復にとらわれず、これを機に学校を子どもたちの成長により良い場所にしていくにはどうすべきなのか、と考えています。」


(経済学部G2)
「高校生の時に生命倫理と科学技術、市民と科学技術のあり方について学び、大学でこのテーマについて考えを深めたいと思ったのが受講の動機です。

新型コロナ問題によって、芸術や文化、学問の価値が問い直されているように感じています。この問いに市民と国がどのような判断をするのかということに関心を持っています。」


2020年度も、多様な背景や興味関心をもつ大学院生たちが集まりました。オンラインだからこその、密度の濃い授業を目指していきたいと、平川教授は語りました。

以上

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