授業レポート
春学期「科学技術コミュニケーション入門A」
COデザインセンター開講科目<対話術>
COデザインセンターでは多様な授業が開講されています。
今回は「対話術」として開講されている「科学技術コミュニケーション入門A」(担当:八木絵香 ほか)についてレポートします。
本授業の目的と目標は以下です。
現代社会におけるさまざまな社会課題の発見と解決を目指し、実践するための基礎的な力(汎用力)の一つである「対話術」を習得するための「ファシリテーションスキル」を学びます。
演習の題材は、自動運転、再生医療、宇宙政策など科学技術と社会のあいだでコミュニケーションが必要とされる社会課題を想定しています。専門知識を必要とするテーマについて、意見や関心が異なる人々のコミュニケーションを円滑に進めるためのスキルについて学び、その基礎素養を身につけることが本授業の目的です。
初回の授業では、科学技術コミュニケーションについて、また、その中で重視されてきた対話についての講義がありました。以降は、実践形式で進められ、第2回は「伝わらない」を体験するミニワークを行い、第3回と第4回は基本的なファシリテーションスキルを身につけるための演習を行い、そして、第5回と第6回はそれぞれあるテーマに関するグループディスカッションを実際に行いながらファシリテーションの実践を行いました。そして、第7回にふりかえりと総合討論を行う、というのが授業全体の流れです。
この授業の受講生には、夏に実施が予定されている市民参加型のワークショップでグループファシリテーターを務めるという実践の場も用意されています。
今回は、第3回、第4回、第5回に相当する、2019年4月23日、5月7日、5月14日に行われた授業の様子をレポートします。
4月23日
この授業では、実践をとおしてファシリテーションのスキルを学びます。
八木絵香 COデザインセンター准教授によるイントロダクションのあと、早速実践にはいります。
あるテーマに対する様々な人の意見が読み上げられ、受講生たちはそれ聞き、頭の中で内容を整理しながら、ホワイトボードに書きとめていきます。
膨大な情報全てを書きとめるのは不可能です。
どの言葉を選び、書きとめるか。
それらの言葉を、どのようにホワイトボードに配置するのか。
ひとが話す言葉は、書きとる側からするとかなりのスピードに感じられます。
内容を素早く把握、理解しつつ、判断しながら、同時に手を動かさなければなりません。
授業の最後には、それぞれがホワイトボードに書いた内容をお互いに見て、気づいたことを共有しました。
ホワイトボードに書かれた言葉やその配置は、書く人によって全く異なるものになっていました。
受講生たちは、自分自身がファシリテーターや書記として実際にディスカッションに参加する場面を想像しながら、質問したり考えたりしていました。
5月7日
今回は、受講生たちがあるテーマについてグループディスカッションを行います。
この日受講生たちが取り組んだテーマは「顔認証・追跡システム」。担当教員がこれまでに多様な方の意見を聞いてきたテーマです。
まずは、自分の意見をひとつひとつ付箋に書き込んでいきます。
そして、できるだけ多くの付箋を作ります。
次に、グループのメンバー全員で、それらの付箋をいくつかのまとまりに分けていきます。
いくつかの付箋をひとつにまとめたり、いったんまとめたものを2つに分けたりしながら、どのようにまとめると良いかを考えます。
最後に、それぞれの付箋のまとまりに名前をつけていきます。
今回は、どちらのグループも、すべての付箋を時間内できれいにまとめるというわけにはいかなかったようです。しかし、自分たちで実際にディスカッションをしてみることで、ディスカッション中にどういったことが起こるのか、イメージができるようになったようです。
5月14日
今回の授業では、前々回、前回の授業で得たことを生かし、実際のワークショップにかなり近い状況にチャレンジしました。
ある社会的なテーマに関してグループディスカッションを行います。
グループメンバーのうち1人がファシリテーター、もう1人が書記をつとめます。
今回取り組むディスカッションの目的は、グループメンバーで何か一つの結論を出すことではありません。
グループのメンバーひとりひとりが意見を言いやすくするにはどうしたらいいか、それぞれの意見をより深めるにはどうしたらいいか、意見と意見の関係性をみんなで把握するにはどうしたらいいか。
まずはやってみることが大切です。
授業の最後には、担当教員からのフィードバックがありました。
ディスカッションの展開、ファシリテーションの方法や、記録の仕方などについて、2つのグループの違いや特徴について考えました。
受講生たちは、実践をとおして学ぶことで、「もっとこうしたらいいのでは」「ここはこうしたのが良かった」など、自分なりのファシリテーター像をつくっているようでした。
(書き手:森川優子 COデザインセンター特任研究員)