受講生インタビュー(安井裕人さん)
春学期「科学技術コミュニケーション入門A」ファシリテーションスキルを学ぶ
社会とつながる〜大学の「外」で話す(1)
参加者の方の気持ちの変化に気づくことができた
春学期「科学技術コミュニケーション入門A」ファシリテーションスキルを学ぶ
「科学技術コミュニケーション入門A」は、意見や関心が異なるひとびとのコミュニケーションの場を想定し、そういった場でのファシリテーションスキルを学ぶ授業です。
演習の題材は、自動運転、再生医療、宇宙政策など、科学技術と社会のあいだでコミュニケーションが必要とされる社会課題です。
春学期に行われたこの授業で、受講生たちは、ファシリテーションスキルを学び、そして、大学の「外」で開催されたサイエンスカフェやワークショップでファシリテーションを実践しました。
<実践の場>
・2019年6月26日:サイエンスカフェ@千里公民館「自動運転とわたしたちの暮らし」
・2019年7月13日:市民参加型ワークショップ@梅田「新しい医療と、くらし〜再生医療のあるべき未来像〜」
今回はファシリテーターとして参加した3人の学生に、感じたこと、考えたことを話してもらいました。
本シリーズの記事はこちらをご覧ください。
(1)川端 玲 さん(大阪大学大学院工学研究科 博士前期課程1年)
「参加者の方の気持ちの変化に気づくことができた」
3回にわたりレポートする、1回目です。
安井 裕人 さん
(大阪大学大学院生命機能研究科 博士前期課程1年)
- 安井さんが授業「科学技術コミュニケーション入門A」を受けようと思ったきっかけについて教えてください。
単純に「楽しそうだな」と思い、授業をとりました。せっかく阪大の大学院にまできたのだから、ここでできることをいろいろやってみたい、と思っていたところもあります。僕自身、サイエンスカフェやワークショップというものに参加したことがなかったので、やってみたいなとも思いました。
- では、初めて参加したサイエンスカフェが千里公民館での「自動運転とわたしたちの暮らし」だったのですね。ファシリテーターとして参加して、いかがでしたか。
なかなか難しかったですね...。ちょっと緊張し過ぎた、と思います。大学の外で、自分よりかなり年齢が上の一般の方々に囲まれてしゃべる、ということ自体が初めての経験でした。
- 特に苦労したことは何でしたか?
僕のグループでは、ディスカッション中に話が途切れてしまうときがありました。僕は話をなんとかつなごうとして、それまでに参加者の方々から出てきた意見をまとめようとしたのです。でも、意見全体をうまくまとめるのはなかなか難しかったですね。
サイエンスカフェ終了後、同じグループの参加者の方から「もっとどんどん質問をしていったらよかったのに」というようなアドバイスというか、ダメ出しというか、そういう言葉ももらって...。とにかく難しかった、という印象が残っています。
- それでは、二回目の経験となる梅田での市民参加型ワークショップ「新しい医療と、くらし〜再生医療のあるべき未来像〜」は、どうだったのでしょうか。
千里公民館での経験があったので、どういう流れでやるのか、ということがわかっていた分、気持ちがかなり楽でした。参加者の方々のお話をしっかり受け止める余裕ができたと思います。
- テーマは、再生医療でした。
参加者の方々から実体験を踏まえたお話がいろいろと出てきて、興味深かったです。病気のご経験がある方から「再生医療は素晴らしい。どんどん進めてほしい」という意見が出たり、不妊治療のご経験のある方からは「私はちょっと抵抗がある」という意見があったり。
印象に残っているのは、ワークショップの終了間近に、ある参加者の方が、「結局、再生医療を進めていいのかどうなのか、分からないな」とおっしゃったことです。その方は、ワークショップの前半では「再生医療はどんどん進めたらいい」という方向でお話されていたのですが、ワークショップが進むうちに心境に変化があったように感じました。
- 参加者の方の気持ちの変化に気づいたのですね。
はい。このワークショップで一緒に話した方々は、このあとも引き続きこういったテーマについて考え続けてもらえそうだ、と感じました。それが、この日はうまくいったという実感につながったと思います。この会が終わっても、また別の機会にそれぞれの方が身近なひとたちとこういった話をしてくれたらいいな、と思います。
このときは、ワークショップ終了後に、参加者の方から「ファシリテーション、とてもよかったですよ」と言われて、それもうれしかったですね。
- 授業の中で学んだことを、実践の場で生かすことはできましたか?
僕の場合は、自分より年齢が上の方に囲まれると少し遠慮してしまい、あまり踏み込んだ質問ができないということがありました。参加者の方がご自身の実体験に基づいてお話くださる分、話が具体的になりすぎたり、別の方向にそれてしまったりということもありました。
そんなとき、質問を変えてみたり、少し話を戻したり、ホワイトボードにメモをしたりしてみました。授業の中で、こういった場でのファシリテーションの具体的な方法を学んでいたからこそ、できたことだと思います。
- ご自身の変化としては、どういったものがありましたか?
僕はもともと、社会的なテーマについてひとと話すのが好きだったのですが、ニュースなどで何か気になることが出てきたときに、それについてひとと話す機会がより増えたと思います。話しやすくなりましたね。ファシリテーターをした経験をとおして、こうやって話していくと議論が深まっていくのだな、ということが掴めたように思います。やはり、大学の外で、全く知らないひとと話す、という経験が大きかったのだと思います。
(書き手:森川優子 COデザインセンター特任研究員)