大阪大学
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INTERVIEW

受講生インタビュー

2019年12月10日(火) 公開

受講生インタビュー(川端玲さん)
春学期「科学技術コミュニケーション入門A」ファシリテーションスキルを学ぶ
社会とつながる〜大学の「外」で話す(2)
論点を整理することで、議論の質を高めることができる

科学技術コミュニケーション入門A」は、意見や関心が異なるひとびとのコミュニケーションの場を想定し、そういった場でのファシリテーションスキルを学ぶ授業です。

演習の題材は、自動運転、再生医療、宇宙政策など、科学技術と社会のあいだでコミュニケーションが必要とされる社会課題です。

春学期に行われたこの授業で、受講生たちは、ファシリテーションスキルを学び、そして、大学の「外」で開催されたサイエンスカフェやワークショップでファシリテーションを実践しました。


<実践の場>
・2019年6月26日:サイエンスカフェ@千里公民館「自動運転とわたしたちの暮らし」
・2019年7月13日:市民参加型ワークショップ@梅田「新しい医療と、くらし〜再生医療のあるべき未来像〜」


今回はファシリテーターとして参加した3人の学生に、感じたこと、考えたことを話してもらいました。

本シリーズの記事はこちらをご覧ください。
(1)安井 裕人 さん(大阪大学大学院生命機能研究科 博士前期課程1年)
「参加者の方の気持ちの変化に気づくことができた」

(3)川上 結生 さん(大阪大学理学部 4年)
「議論の広がりをつかみ、「意見の地図」をつくる」

3回にわたりレポートする、2回目です。


川端 玲 さん
(大阪大学大学院工学研究科マテリアル生産科学専攻生産科学コース 博士前期課程1年)

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- 川端さんが授業「科学技術コミュニケーション入門A」を受けようと思ったきっかけについて教えてください。

大学院入学後4月のガイダンスで資料をたくさんもらって、それをパラパラと見ていたら、STiPS(※1)のリーフレットが入っていました。もともと、学部生のときに副専攻のチラシを見て興味を持ち、なにか取ろうと思っていたのです。

(※1)副専攻プログラム・高度副プログラム「公共圏における科学技術政策(STiPS)」
科学技術に関わる社会的な課題について、専門外の人びとにどのように伝えるべきか、どのような知識に基づいて考えるべきか、課題解決に向けた公共的な意思決定に誰が参加すべきかを、科学技術コミュニケーションや人文学・社会科学の観点から学ぶことができるプログラム。「科学技術コミュニケーション入門A」は本プログラムの構成科目のひとつとなっている。


副専攻のガイダンス(※2)に行ったとき、STiPS のブースで八木絵香先生とお話をする機会がありました。八木先生のお話を伺ううちに、自分の興味関心が明確になったように感じて、STiPSをとってみようと思いました。「科学技術コミュニケーション入門A」は、八木先生の授業だったということもあり、受講することにしました。

(※2)副専攻/高度副プログラムガイダンス:毎年4月に行われる、副専攻プログラム、高度副プログラムについて紹介する説明会。

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- では、STiPSのプログラムとして授業を受けているうちに、大学の外でのサイエンスカフェやワークショップにも参加してみようかな、という気持ちになったのですね。

そうです。授業をとおして、自分の専門分野とは異なる分野のテーマについて大学の外で話すことは大切なことだ、と感じました。ファシリテーターとして参加することで僕自身も得るものがあると思い、サイエンスカフェに参加することを決めました。

また、僕はニュースや新聞を見るのが好きなのですが、まわりの友人や先輩にそういう話をしてもあまり盛り上がったことがないのです。それはなぜなのかと常々思っていました。社会的に重要で、みんなで考えていかなければいけない課題というものはたくさんありますし、それらに関して多くのひとに知ってもらうべき情報というものもありますよね。そういった社会課題に対するひとびとの興味関心に濃淡がある場合、どうすれば関心が薄いひとたちにも情報を得てもらえるか、どうすればみんなでその課題について話をし、一緒に考えていけるか、ということに興味がありました。

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- 実際に大学の外でワークショップに参加して、授業で学んだファシリテーションスキルを生かすことができましたか?

うーん、そうですね、実際のワークショップは授業とは全然違った、というのが実感です。まあ、そういうものなのではないでしょうか。

- どういうところが違いましたか。

まず、参加者の方のモチベーションが全く違いました。授業では学生同士で「どうやって『いい答え』を出そうか」と考えていたと思うのですが、大学の外でのワークショップでは、「私はこれが言いたい」というひとたちが集まっているように感じました。

- なるほど。そのような場で、川端さんご自身は、どのようなことを意識してファシリテーションしましたか?

僕は、ファシリテーターが全く発言せずに議論を運営することができれば、それに越したことはないと考えています。ですから、僕は基本的に参加者のみなさんに任せていました。もし特定の方のお話が長く続くようなことがあれば、少しだけ「何々さんはいかがですか」と他の方のお話を促すくらいです。でも実際は、それほど偏りなくみなさんお話をしてくださいました。僕が黙っていても議論はすすんでいましたし、そんなに大きく話が脱線することもありませんでした。

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- ワークショップで、どのようなことが印象に残っていますか。

参加者のみなさんがとても積極的に発言していたことです。僕が学生なので、人生の先輩として自分の経験を話してあげよう、という雰囲気も感じました。実際、お話を伺ってなるほどと思うことも多かったです。

特に印象に残ったのは、千里公民館のサイエンスカフェでのことですね。グループの全員で話をしたあと、最後に篠原先生(※3)がまとめのコメントをされました。そのコメントの内容が、僕たちのグループの中で出てきていた意見と一致したのです。僕は、きちんと整理して議論をすすめれば高いレベルの結論に到達することができるのだな、と、非常に感銘を受けました。三人寄れば文殊の知恵、という感じですよね。非常に印象に残っています。

(※3)篠原 一光:大阪大学大学院人間科学研究科 教授。サイエンスカフェ@千里公民館「自動運転とわたしたちの暮らし」で講師を務めた。


- どうしてそのようなことが起こったのでしょう。

参加者のみなさんが、「いい意見を言おう」というのではなく、本当に心からここで言いたいと思っていることを言っていたからではないでしょうか。それを聞いたひとが触発されて、自分もこう思うと本音で話す。たぶんそういうことがあったのではないかと思います。

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- 最初に参加したワークショップが、かなり手応えがあったのですね。

もちろん、もうちょっとこうしたかったな、ということもありました。出てきた意見を100%すくい上げるのは難しかったです。僕がこれは重要ではないなと思ってまとめに入れなかったら、「いや、それは大事なことだから入れてほしい」と参加者の方から言われたりもしました。

また、僕は参加者のみなさんに任せて議論をすすめていたのですが、もしグループの中にあまり話さないひとがいたら、もう少しファシリテーションに工夫が必要だったかもしれない、とも感じています。

- うまくいったことも、もう少しこうしたいということも、両方あったのですね。また機会があれば参加してみたいですか?

はい、そうですね。機会があればまた参加したいと思っています。


(書き手:森川優子 COデザインセンター特任研究員)

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