授業レポート
春~夏学期「協働術E(地域再生プロジェクト)」
COデザインセンター開講科目<協働術>
COデザインセンターでは多様な授業が開講されています。
今回は春~夏学期に「協働術」として開講されている「協働術E(地域再生プロジェクト)」の参加学生による最終報告会をレポートします。
本授業の目的と目標は以下です。
経済成長・人口増を背景とした宅地開発、交通政策は、私たちに快適で便利な暮らしをもたらしたが、安定成長、少子高齢化に流れが変わった今日、ひずみや問題が浮き彫りになってきている。
この授業では、能勢電鉄沿線(1市3町)をフィールドとして、地域コミュニティの抱える問題や課題を理解した上で、まち・みちづくりをどう進めていくのか、またそうした地域の課題に地域の人びとが主体的にかかわっていくために何が必要なのかについて考え、その対策を沿線住民や、事業者に提案することを目的とする。
具体的には、受講生それぞれの背景(学部、出身地、経験等)を踏まえた上でこの地域の課題を見いだし、グループワークにより、その課題に向けての提案を関係者にプレゼンすることを考えている。
今回レポートするのは、能勢電鉄の方々や、地域住民の方々に向けた最終報告会です。
<発表した日>
●日時:2018年8月7日(火)10:00-12:00
●場所:能勢電鉄株式会社
最終報告会は、能勢電鉄株式会社にて行われました。
お忙しい中、約40名の能勢電鉄の社員の方々、地域の方々がご参加くださいました。
学生からの発表の前に、森栗 COデザインセンター教授 がご挨拶させていただきました。
「本授業は、能勢電鉄様や地域の皆様にご協力いただき成り立っている授業。2013年から始まり、今年で6年目になる。
学生たちの発表に価値がもしあるとしたら、若い人たちの目から見た『能勢電鉄がある町』の素晴らしさを若い人たち自身の言葉で話す、ということではないかと考えている。」
本授業は、学生たちが自分たちの持っている経験や関心をどのように生かすことができるか、ということを中心に置いています。
実践的にプロジェクトをつくるプロセスを学びながら、コミュニケーションを大切にし、公としての市民を育てることを目指しています。
報告タイトルは、「サイダーバレー構想への挑戦」です。
能勢電鉄沿線の川西市平野は「三ツ矢サイダー」の発祥の地であり、能勢電からもその工場跡を見ることができます。実は「三ツ矢」の名前も、その由来のひとつが源氏発祥の地、多田神社にあるのです。猪名川沿い、つまり「バレー(=谷)」に能勢電が走っていることから、学生たちは、猪名川流域を総称して「サイダーバレー」というフレーズを考えました。地域の歴史を再確認し、地域のアイデンティティを創出するためのキーワードとして設定しています。
「サイダーバレー」とは、この地域に対して一人一人が持つ多様なイメージの総称です。そこには、一人一人の経験や思い出も含みます。
全国的な人口減少傾向の中であっても、コミュニティに力がある地域には人が集まり、活力を持つことができます。
力のあるコミュニティをつくるためには、自分たちにとってこの地域はこういうところだ、というイメージを明確にすることが大切だと、学生たちは考えました。
コミュニティをつくる際に基盤となる地域への愛着、それを育てるために「サイダーバレー」という名前をつけることを提案しました。
能勢電鉄周辺地域の特徴をアピールにするために、能勢電鉄沿線で産出された炭酸水をアピールポイントのひとつにする、ということも提案しました。
地域の方々が参加できるようなワークショップを企画するという案や、資金計画についても、学生たちなりに考えて提案しました。
当地域の一番の魅力は、能勢電鉄があるということです。
能勢電鉄があることで、ここに住もう、働こうと考える多くの人が存在する、と学生たちは考えました。
能勢電鉄沿線の食をアピールするという施策も提案しました。
「食のテーマパーク構想」として、レストラン、食育、ホテル・ルーム事業の3つについて、それぞれ考えてきたことを提案しました。
参加者の方々からは、以下のような質問や指摘をいただきました。
「今後ますます高齢化社会となる。そういう時代において、地域とは何なのか。能勢電鉄の素晴らしい環境は、地元の人が先祖代々から受け継ぎ、築き上げたもの。また、この地域には、先祖代々この土地に住む人たちもいれば、一代だけここに住んでいるという人たちもいる。新しい事業を立ち上げる際、そういった様々な人たちにどう納得感をもってもらうか、それが難しい。地域をいかに巻き込むかが重要なのでは、と思った。」
「地域に住む多様な価値観の人々をまとめるコンセプトが重要。なぜ私たちはこれをしないといけないのか、ということが何か欲しい。発表内容としてはよく調べていると思ったが、コンセプトの深掘りについてはもう少し欲しかった。」
「特に食のテーマパークは興味深かった。やはりポイントは、誰が中心となってやるのか、というところ。具体的な事例が欲しかった。」
最後に、能勢電鉄社長 城南様 より、コメントをいただきました。
「能勢電鉄は地域と一心同体。現在、環境は変わりつつある。新名神高速道路が開通し、交通の利便性が向上し、そこに目をつけた企業が周辺地域に移転してきている。また、現在、防災の観点から事業の継続性を考えた時に、内陸に拠点を移すということを考え始めている企業もある。周辺に仕事が興りだした。それらをうまくつなげ、職住近接の環境を創造するということを目指したいと考えている。
今回の発表について、たくさんの気づきがあったと思う。現在、『能勢電アートライン』を行なっており、これによってブランド力、地域のコミュニティの力を伸ばしていきたいと考えている。交流人口を増やし、それを定住人口につなげたい。」
学生たちは真剣な表情で耳を傾けていました。
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この授業は、授業タイトルは変わりつつも、毎年実施されている人気授業です。
こちらの受講生インタビューもぜひご覧ください。
(書き手:森川優子 COデザインセンター特任研究員)