大阪大学
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イベントレポート

2018年4月23日(月) 公開

未来共生セミナー:SOGIの多様性と共生の課題
「トイレ・更衣室問題から考える多様性」
開催レポート

2017年7月、大阪大学は、大学における全構成員のSOGI (Sexual Orientation and Gender Identity: 性的指向と性自認)の多様性と権利を認める基本方針を発表しました。高等教育におけるSOGIの多様性の認識と理解は初等中等教育に比べ大きく遅れているのが現状です。また、この問題はジェンダー平等や性差別撤廃に関する取り組みと密接なつながりのなかで考える必要もあります。

本連続セミナーは、セクシュアリティ(性)とジェンダー(性別)に関わる課題が"マイノリティ"として括られるひとびとのみならず、すべてのひとに関わるものであることを再認識し、どうすれば大学キャンパスにおいて誰もが尊重され、安心して生活を送ることができるのかを考えるために行われました。

第二回目は、2018年3月16日(金)、大阪大学 豊中キャンパス 全学教育推進機構実験棟 I サイエンス・スタジオA
にて、「トイレ・更衣室問題から考える多様性」をテーマとして行われました。

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2017年7月、大阪大学はSOGIの多様性に関わる基本方針を発表するとともに、性別を問わないトイレや男女別トイレのための、色分けや服装イメージなどによらないトイレサインのデザインを提案しました。しかし、こうしたトイレサインに関わる試行錯誤は問題を考えるための発端にすぎません。トイレや更衣室の使用をめぐる問題から、わたしたちの性や性別に関する前提を問い直し、大学キャンパスにおける多様性について来場者とともに議論することを目的に、本セミナーは開催されました。


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最初に、ほんま先生より、阪大がダイバーシティについてどのように取り組んできたか、ほんま先生がトイレサインについて取り組むようになった経緯がどのようなものだったか、について説明されました。そして、阪大のトイレサインの現状について、実例を示しつつ報告がありました。

ジェンダーをどのようにシンボルとして表していくのがいいのか、しかしそもそもそれだけの問題なのか。性別を気にせず使用できるトイレを考えていくためには、多目的トイレをジェンダー関係なく使えるようにしたら問題が解決するという話ではないのではないか、という問題提起がされました。

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次に、東優子先生(大阪府立大学教授)より話題提供がされました。

2015年に文科省の通知が出て以来、全国の教育委員会で非常に多くの「性の多様性」をテーマにした研修・講演が行われているそうです。しかし、そういった場で扱われるのは、性の多様性のほんの一部でしかない、とのことでした。
東先生は、「『性染色体を見たときの性』『からだの性』『性自認』『性的指向』など、いずれにおいても多様で非常に複雑なグラデーションになっている。セクシャリティは十人十色。」ということを強調していました。

さらに、残念ながら、二項対立的にものごとを捉え、良い悪いという価値をつけるというのが私たちの世の中である、ということや、性の多様性についての「正しい知識、正しい理解」を身につけようというけれども、そこでいう正しさというのは何なのかということ、また、「他者の理解、他者への配慮」とについてはどう考えるかということ、についても問題提起がされました。

特に、トイレ問題については、アメリカでは非常に高い関心を集めており、政権を巻き込む議論になっているそうです。実際にどのように取り上げられているかということについても、具体的に説明がありました。


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セミナーの後半は、ゲストとして、古怒田望人さん(大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程)、土肥いつきさん(高校教員・大阪府立大学大学院博士後期課程)がお話されました。

古怒田さんは、ジェンダークィアのパンセクシャルであることを公表し、東京都内にて、「「性」を共有する哲学サロン「ふらてるにて」」というマジョリティ、マイノリティの垣根を越えた団体を草の根的に運営されています。女性でも男性でもないニュートラルな存在から見るトイレにまつわる問題について、ご自身の経験をもとにお話されました。

土肥いつきさんは、ご自身の職場で女性トイレや女性ロッカーを使うようになった経緯について、お話くださいました。

会の終盤は、ほんまなほ さん(大阪大学COデザインセンター准教授)による進行で、参加者のみなさんもまじえ、質疑応答、意見交換がなされました。


*****

COデザインセンターでは、これらのテーマについて多くの方々と一緒に考えていくために、今後もこのような企画を実施していく予定です。是非多くの方にご参加いただきたいと思います。

(書き手:森川優子 大阪大学COデザインセンター特任研究員)

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