大阪大学
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INTERVIEW

卒業生インタビュー

2017年6月23日(金) 公開

ユニ・チャーム株式会社
小森 駿介さん インタビュー
いつか、自分が今までやってきたことを社会に還元したい

 COデザインセンターで様々に展開される授業や活動。それらに関わった方々が、その後どのように歩みを進めるのか。卒業生の方々にインタビューするシリーズです。
 今回は、小森 駿介さん(ユニ・チャーム株式会社)にお話を伺いました。

(聞き手:水町 衣里/大阪大学COデザインセンター特任助教)

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小森 駿介さん

大阪大学大学院工学研究科ビジネスエンジニアリング専攻 博士前期課程 修了
副専攻プログラム「公共圏における科学技術政策(STiPS)」(※1) 修了


社内と社外を「つなぐ」役割として

水町:
いまのお仕事の内容について、教えて下さい。

小森さん:
所属部署は、購買部です。購買部は一般的に「調達専門の部隊」というイメージだと思いますが、弊社の購買部は開発部門の内部にあります。素材は商品価値に大きく影響を与えるので、開発の設計思想やねらいを調達の段階から活かそう、という考え方に基づいています。
 僕は、おむつなどに使われるある素材の担当をしています。社内ではその素材のプロフェッショナルであることを求められ、いかに良いものを安く安定的に調達できるか、という視点で社外を見ています。社内においては、開発の意図をくみ取り、その上でどんな素材が必要なのか、どのくらいの価格で必要なのかを考えることが求められます。更に、製造現場の声も踏まえ調整しなければなりません。ものづくりの各工程に常に関わる役割、ということになりますね。

水町:
まさしく、「つなぐ人材」(※2)ですね。

小森さん:
素材がないと製造の全てが止まってしまいますから。スピード感、臨場感を感じつつ働いています。まだ必死についていっている段階ですけれども。

STiPSで、自分の「強み」を認識することができた

水町:
そもそも、小森さんはなぜSTiPSを受講しようと思ったのでしょうか。

小森さん:
僕は学生時代、工学研究科ビジネスエンジニアリング専攻に所属していて、ビジネス的な視点と、研究者的視点、技術者的視点をあわせ持ったようなことをしたいと思っていました。就職が決まったあと「何か面白いことはないか」と探していた時にSTiPSと出会いました。特に明確なねらいのようなものを持っていたわけではなく、面白そうだからとりあえずやってみよう、という気持ちでSTiPSの受講を決めました。
 受講してみて、インプットの幅が広いこと、インプットだけではなくワークショップのようなアウトプットの場面も多くあることに非常に刺激を受けました。ワークショップでは、「この人はこういう考え方をするのだな」と驚いたことも多くありました。問いを立てるのが上手な人が多かったのも印象的でした。僕はどちらかというと、何か事象を前にしたとき「なるほど、そういうことがあるのなら、ではどうしようか」と考えるタイプで、どちらかというと「how」に意識が向くのですが、参加者の中には「whyの思考」を持った方がたくさんいました。「そもそも、なぜそうなってるのか?」と考えるのですね。「負けてられないな」と思うと同時に、物事をスピーディーに進めて行く場合、僕の「how」の思考は役に立つのだなと、自分自身の強みを認識するきっかけにもなりました。

水町:
普段出会わない考え方の人と出会うことで、自分の特徴がより際立って見えた、ということですね。

小森さん:
そうですね。STiPSでの時間は、僕の学生生活のなかでも異質な時間だった、と思います。STiPSでなければ味わえないことだったかもしれないですね。自分を客観視する機会、自分の強みを認識する機会になったと思います。

水町:
小森さんは、研究プロジェクト(※3)では「日本の食品問題において消費者の不安感に影響を与える要素の考察」というテーマに取り組まれたのですよね。

小森さん:
研究プロジェクトを経験することによって、「自分から取りに行く情報」が増えましたね。普段読まない本を読むようになったり。自分自身に変化がありました。

水町:
これは、「実験をする」とか「アンケートを取る」というよりは、テーマを決めて幅広い文献にあたって情報を集め、それを自分なりに整理する、という手法だったのですよね。

小森さん:
僕にとっては、研究プロジェクトは本当に難しかったです。当時、研究テーマというものは「そもそも存在するもの」だと思っていたのです。社会問題として既に何か課題とすべきものがあって、それに対して実験をし、そこから出て来た事実や現象に対して考察することこそ、自分がやるべきことだ、と考えていたのです。しかし研究プロジェクトでは、「どういう問いを立てるか」ということに多くの時間をかけました。この実験をやって、次にこの分析をやって、というものではなくて、情報を集めてきて、それをある視点からザクッと切って「こうです」と言う。自分の切り口を見つける、という感じでしたね。そういう考え方は非常に新鮮でした。


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いつか、今の自分と過去の自分につながりを持たせることができれば

水町:
それらの経験は、今のお仕事にどのように活きているのでしょうか。

小森さん:
学生時代、ビジネスエンジニアリング専攻とSTiPSというユニークなところに所属していたことは、僕の原点となっています。その原点を目印に「今、ここまで来た」という風に距離をはかっている、という感覚です。学生時代に様々な知識をインプットしたことや、いろいろな人の話を聞いて「こういう世界もある」と視野を広げたことで、自分のやろうとしていたこと、楽しかった場所というのはここなのだ、という「地図」のようなものが自分の中にできたのです。今は目の前の仕事に必死についていっている状況ですけれども、いつか今の自分と過去の自分との間につながりを持たせることができれば、と思っています。

水町:
今すぐ役に立つ、というようなものでなくてもいいのですよね。

小森さん:
今は、社会人としての基礎体力をつけている段階だと思いますが、そこから自分らしさを出していく時に、自分の過去を振り返る時期が来るだろう、と思っています。

水町:
最後に、後輩へメッセージをお願いします。

小森さん:
僕は、いつかどこかで、何かを「つなぐ」というような役割で、自分が今までやってきたことを社会に還元できたら、と思っています。STiPSのように自分の世界をぐっと広げることができるような環境は、意外と少ないのではないかと思います。ですから、こういう環境をうまく活用してほしいですね。自分の思考の癖がわかったり、自分の強みを認識したりできる機会になると思います。それがきっと、直接的ではないかもしれないですけれども、社会に出ても役に立つと思います。

水町:
いろいろな考え方があるとか、いろいろな価値観があるとか、いろいろな分野があるとか、そういうことを知る機会、ということですね。

小森さん:
それを通して、自分のことがわかると思うのです。


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※ 所属、担当はインタビュー(2017年1月)時点のもの。

※1)副専攻プログラム「公共圏における科学技術政策(STiPS)」
「科学技術の倫理的・法的・社会的問題(ELSI)に関する研究を基盤として公共的関与の活動と分析を行い、学問諸分野間ならびに学問と政策・社会の間を「つなぐ」ことを通じて政策形成に寄与できる人材」の育成を目指すプログラム。自らの専門分野の枠組みを超えて、広く俯瞰的・多角的に科学技術と社会の諸問題・課題を洞察・理解し、かつ公共的関与の活動と分析を行えるような知識とセンス、実践的な能力を備えた人材を育成しています。

※2)「つなぐ」人材:
小森さんが修了された副専攻プログラム「公共圏における科学技術政策(STiPS)」が育成を目指す人材。
STiPSでは、自らの専門分野の枠組みを超えて、広く俯瞰的・多角的に科学技術と社会の諸問題・課題を洞察・理解し、かつ公共的関与の活動と分析を行えるような知識とセンス、実践的な能力を備えた人材を育成している。

※3)研究プロジェクト:
公共的視点から科学技術と政策や社会とを「つなぐ」活動や成果物の作成を行う、副専攻プログラム「公共圏における科学技術政策(STiPS)」の総仕上げという位置付けの授業。学生それぞれが興味のあるテーマを設定し、複数の担当教員による個別指導を受けながら、学術研究論文あるいはそれに準ずるものの作成を目指す。


(書き手:森川 優子/大阪大学COデザインセンター特任研究員)

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