大阪大学COデザインセンター長
池 道彦 センター長メッセージ
2022年4月よりセンター長を拝命しました。私の研究分野は環境工学であり、主に微生物や植物を使った環境保全・浄化や資源生産・循環に関わるエコ・フレンドリーな技術開発に取り組んでいます。さまざまな研究に取り組んできた中で、『脱炭素』を始めとする環境問題の解決には、新しい技術を開発するのみでなく、それを実装し無理のない形で利用する社会的しくみや、その価値を世の中に理解してもらう教育が必須であると強く感じるようになりました。また、環境問題のような複雑系の解決に向けては、自らの専門だけでなく他の領域の研究者・技術者や企業、行政、市民との連携が必要であり、分野を横断し、越えていくcross-sector、cross-borderこそが重要であることを思い知らされてきました。
大阪大学COデザインセンターは、「社会と知の統合」を目指す教育研究拠点として、2016年7月に大阪大学に設置されたものであり、本学において、まさに私が求めているcross-sector、cross-borderを具現化する人材を育成する教育の中心的役割を担っています。
大学の中では一般的に、学部や研究科という縦の専門性の中で教育が行われますが、私たちCOデザインセンターが提供する教育は、さまざまな専門を持つ教員や学生が一堂に会し、共に考え、問題を発見・再定義し、解決の方法を見いだしていく横断型の教育です。時にはその学び方自体をも、専門の枠を超えて共に考え、人類が直面する多くの課題に対しての新しい「構え」を身につけられるような教育の場づくりを目指してきました。
COデザインセンターの英語名称は、Center for the Study of Co*Designです。この「co-star」のスター、つまり記号の「*(アスタリスク)」にはさまざまな綴りが入り、単語を形成します。Communication(対話)、Collaboration(協働)、Compilation(編集)、Co-creation(共創)、Concerto(協奏)がその代表的なものであり、COデザインセンターの教育は、これらのコンセプトのもとにかたちづくられています。
また近年、AIやIoT、生命科学に代表されるように、科学技術・イノベーションの急速な進展により、社会のあり方と科学技術・イノベーションとの関係が密接不可分な状況が到来しています。このように複雑化する諸課題に対峙していくためには、医薬理工系の専門知識のみならず、人文学・社会科学系の専門知に基づく、人間や社会のあり方に対する深い洞察に基づいた学際的アプローチが不可欠となりつつあります。本センターでは、研究科とは独立した組織として、社会課題解決と結びつけて授業を展開することで、多様な専門分野の連携、複合的かつ領域横断的なテーマへの取り組み、そして実社会の課題を解決に導くデザインを行う共創の場となる学内プラットフォームの形成を目指しています。
COデザインセンターの取り組みにご期待ください。また、その取り組みを通じて、多くの方とご一緒できる機会のあることを切に願っています。