はじめによんでね 医療人類学用語辞典

象徴的相互作用論
symbolic interactionism
解説:池田光穂
人間行動を理解するために提唱された理論的枠組のことで、ハーバート・ブルーマー(Herbert Blumer)が1937年に初めて用いた。シンボリック相互作用論とも翻訳されることの多い、この理論枠組は人間と社会の成り立ちについて次のような3つの前提を想定する。(1)人間は、外界の事物に対して付与する<意味>に則って行為する。これが「象徴的」と形容する理由である。(2)このような<意味>は、個人的かつ内面的世界から生まれるものではなく、人びととの社会的相互作用の中から生まれる。そして、(3)個人が出会う様々な社会過程の中で、<意味>は加工され、修正を受けて発展してゆく。これらが可能になるのは、個人が社会という外界との相互作用の中で<意味>の解釈を積み重ねてゆくという過程が存在し、これが行為の基礎となっているからである。「相互作用論」と呼ばれるゆえんである。
象徴的相互作用論は、G・H・ミードのプラグマティズム行為論に、そのアイディアの源泉を求めるが、重要なことは、1920〜30年代半ばまでのアメリカ合衆国のシカゴ学派社会学が積み重ねてきた実態的な社会調査研究に通底するひとつの視座を明確化させたことにある。この理論枠組によれば、人間の行為は、社会科学が自明視する心理的あるいは社会的因子によっては説明することができない。行為のこのような決定論の代わりに、個人の解釈過程に焦点を当てるのである。そのため、象徴的相互作用論では、参与観察やライフヒストリーなどの質的調査が中心になっていった。医療を対象とした研究領域では、1950年代以降のE・フリードソンとA・ストラウスらの医療組織の研究、H・S・ベッカーのラベリング理論にもとづくモノグラフ研究、N・デンジンのアルコール依存の自己分析研究などがある。
(池田光穂 . Mitsuho Ikeda, copyright, 1999)
しかし、次のような偶像破壊的発言(本人がそのようにラベルされることを嫌っての言葉)もある。
<象徴的相互行為論>は現実性をもたない。それは付与することに成功したひとつのラベルにしかすぎない。E・ゴフマン(p.211)→関連ページ(フレンチコネクション)
Goffman, Erving. 1991. Los Momentos y Sus Hombres. Barcelona: Ediciones Paidos.