か ならず読んでください

先住民か?先住民族か?

Which is better to call SENJYU-MIN or SENJYU-MINZOKU in Japanese as Indigenous Peoples in English?

《先住民 族より先住民のほうが概念把握としては正確である》

解説:池田光穂 

ま ず、言葉の用語法から言って、ひとつの言葉の翻訳語なのですから、両方とも同じだと言う ことができます。

次 に、我々が使う用語法の中に「民 族」を人種とみなす見方があります(→そ の歴史はこちらを参照)。この偏奇な知的伝統を受けて、先住民をあたかも人間の固有の種つまり人種として見なしてしまい、それが我々のいう先住 民・観に影響を与えているのです。これらの複雑な理由から、今日の日本では、先住民だ、いや先住民族だという不毛な議論が続いているのです。したがって、 先住民を、文化人類学者いう民族=エスニシティとして理解していただきたいという事情があります(高倉 2009:39)。

こ ういう不毛な論争は、それらの用語の歴史的経緯を明らかにすることで、解消されます。

も ちろん、先住民という用語は、ペダンティック(知的偏向趣味)な学術用語であり、他方、 先住民族は反差別運動(anti-racist movement)の流れを汲む正しい用語法であり、当事者からも認証されていると、大見得を切ることも可能です。

し かし、この用語法(社会的語用論といいます)の歴史的背景を知らない人間にとっては、プ ロ「先住民族」用語=擁護派——つまり先住民とい う言葉の利用を抑圧して先住民族という用語法のみに一本化することを夢見ている人たち——が、なぜ先住民という言葉を封印して、いちいち先住民族だと言い 換えることを人民に教え込む所行が、ほとんど理解できません。その結果生じるのが、用語法だけを取り締まり、それらの深い原因について考えることを停止し てしまう我が国の悪い伝統であるところの、いわゆる言葉狩りです。

ま た、先住民族という、言葉にはまた困った伝統があります。それは、民 族を人種(race) と同じように使う用語法の痕跡が、今日の我々の中にも残っていることです。このような手垢に汚れた民族という用語を後生大事にする気持ちを理解すること は、私にはできません。

も し、人種が反人種主義運動を理解するために重要な概念であれば、民族という言葉も同様 に、民族=人種という言葉が、人間の種的で固定的な 差異を強調するため使われてきたということを想起し、それに対して否(ノー)というための政治的信条としての反人種主義をとるための用語としてあることを 理解する必要があるようです。

こ のようなことを基本的に理解すれば、先住民/先住民族という用語の区別に目くじらをたて る必要はありません。私じしんは、先住民というこ とばを通常のそれらのひとびとをさす用語として優先的に使うこととし、政治的文脈を意識する時には(つまり反人種主義を想起するときには)先住民族とニュ アンス的に使い分けていうこともありますが、そんな区別はあくまでの、ことばのあやの問題であって、本質的な違いは、どこにもないのです。

た だし、先に述べたように、民族を人種(race)や国民(nation)と混同して訳し てきた日本の歴史的経緯からすると、それらの間の 混乱を避けるために、Indigenous People は「先住民」あるいは「先住の民」(清水 2008:320-321)と示したほうがよいということになります。

先住民族

先住民族は世界のもっとも不利な立場に置かれているグループの一つを構成する。国連はこれまでにも増してこの問題を取り上げるようになった。先住民族はま た最初の住民、部族民、アボリジニー、オートクトンとも呼ばれる。現在少なくとも5,000の先住民族が存在し、住民の数は3億7000万人を数え、5大 陸の90カ国以上の国々に住んでいる。多くの先住民族は政策決定プロセスから除外され、ぎりぎりの生活を強いられ、搾取され、社会に強制的に同化させられ てきた。また自分の権利を主張すると弾圧、拷問、殺害の対象となった。彼らは迫害を恐れてしばしば難民となり、時には自己のアイデンティティを隠し、言語 や伝統的な生活様式を捨てなければならない。

1982年、人権小委員会は先住民に関する作業部会を設置した。作業部会は「先住民族の権利に関する宣言(Declaration on the Rights of Indigenous Peoples)」の草案を作成した。1992年、地球サミットにおいて、先住民族は自分たちの土地、領土、環境が悪化していることに懸念を表明し、世界 の指導者たちは先住民族の集団の声に耳を傾けた。国連開発計画(UNDP)、ユニセフ、国際農業開発基金(IFAD)、ユネスコ、世界銀行、世界保健機関 (WHO)など、国連のさまざまな機関が先住民の健康や識字力を改善し、また彼らの先祖伝来の土地や領土の悪化と闘うための事業計画を実施した。ついで総 会は、1993年を「世界の先住民族の国際年(International Year of the World's Indigenous People)」と宣言し、それに続いて、1995‒2004年が「世界の先住民の国際の10年(International Decade of the World's Indigenous People)」、2005‒2014年が「第2次世界の先住民の国際の10年(Second International Decade of the World's Indigenous People)」に指定された。1997年、人権センターの異なる支所や国連システムの他の部局での経験を得たいと願う先住民を支援するために先住民族 フェローシップが設けられた。

こうした先住民問題に対する関心が強まっていることを受けて、2000年、経済社会理事会の補助機関として「先住民問題に関する常設フォーラム (Permanent Forum on Indigenous Issues)」
https://www.un.org/development/desa/indigenouspeoples/) が設置された。フォーラムは政府、先住民代表同数の専門家の計16人の専門家で構成される。先住民族問題について経済社会理事会に助言し、国連の関連した 活動を調整し、また経済社会開発、文化、教育、環境、健康、人権など、先住民の関心事項について審議する。さらに、「先住民問題に関する機関間支援グルー プ」が設置された。

2007年、画期的な「先住民族の権利に関する宣言(Declaration on the Rights of Indigenous Peoples)」が総会によって採択された。宣言は、文化、アイデンティティ、言語、雇用、健康、教育に対する権利を含め、先住民族の個人および集団の 権利を規定している。宣言は、先住民族の制度、文化、伝統を維持、強化し、かつニーズと願望に従って開発を進める先住民族の権利を強調している。また、先 住民族に対する差別を禁止し、先住民族に関係するすべての事項について完全かつ効果的に参加できるようにする。それには、固有の生活様式を守り、かつ経済 社会開発に対する自身のビジョンを追及する権利も含められる。2014年、総会はハイレベルのイベント、世界先住民族会議(World Conference on Indigenous Peoples)を開催し、宣言の目標達成のコミットメントを載せた成果文書を採択した。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、宣言の実施に関してきわめて重要な役割を果たしてきた。現在でもこのことはOHCHRの優先課題である。同事 務所は「先住民問題に関する機関間支援グループ」を積極的に支援している。国連の国別チームやOHCHRの現地事務所のために先住民問題に関する研修を実 施している。また、「先住民のための任意基金評議員会」にサービスを提供している。任意基金は、先住民コミュニティの5人の代表から構成され、先住民社会 と団体の代表が先住民問題に関する常設フォーラムと先住民族の権利に関する専門家機構(Expert Mechanism on the Rights of Indigenous Peoples)の年次会期に参加できるように支援する。専門家機構は2007年に設置され、5人の専門家で構成される。先住民の権利に関連する問題につ いて人権理事会を支援する。OHCHRはまた、「専門家機構」を支援するとともに、先住民族の人権と基本的自由の状況に関する特別報告者を支援する。さら に、先住民族の権利を向上させるために特定の国や地域を対象にした活動も行っている。立法イニシアチブを支援し、資源採掘産業や孤立した先住民族の権利な どのようなテーマ別の作業を進めている。

Indigenous Peoples, Department of Economic and Social Affairs, United Nations.

出典:https://www.unic.or.jp/activities/humanrights/discrimination/indigenous_people/ (2021年1月18日アクセス)

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